何度でも恋に落ちる
「翼は?3年になったら就活始まるでしょ。何処に就職するの?」

「…まだ、わかんないよ」



翼はそう言うと立ち上がり、図書室から出て行った。




様子がおかしい翼を気にしながらも千夏はそのまま勉強を続けた。






その日家に帰ると、血相を変えた真弓が千夏に駆け寄ってきた。



「真弓!?どうしたの?」

「千夏っ!あんた、持田さんが留学しちゃうって知ってた!?私、今日隼人に聞いたんだけど…」

「え?留学!?…」




あ…


そういえば、付き合う前に翼は3年生になったら留学するって言っていた。

留学の資料も見ていた。




なんでそんな大事なことを忘れていたのだろう…





「千夏はどうするの?ついていくの?持田さん、留学したら卒業まで帰ってこないみたいよ」



呆然とする千夏の肩を揺する真弓。




「…私、翼の所行ってくるね」



千夏はそのまま翼のアパートに向かった。




合鍵で鍵を開け、部屋に入るとリビングで沢山のプリントを見比べている翼がいた。



「…翼」

「ちー、どうしたの?」



翼は眼鏡を外しテーブルに置くと立ち竦む千夏に歩み寄った。




「ちー?何かあったの?泣きそうな顔してるけど…」



心配する翼に千夏は抱きつく。



翼の匂いがする。
翼はここにいる。




「…翼、留学しちゃうの?」



千夏の言葉に一瞬ピクリと反応した翼だが、フッと息を漏らして微笑んだ。
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