物理に恋して
「…せ、先生、怒ってるの?」


勇気を出して、疑問を声にする。


「怒ったら困るわけ?」


ぶっきらぼうに返ってくる先生の声。


「…うん。」


先生が振り向いて目が合うと、微かにため息が聞こえた気がして、思わず俯いた。





─…先生、今、ため息ついた。





なんだか、今にも泣いてしまいそうだ。















「だったら妬かせんじゃねぇよ」





ポンと音がして、顔を上げてテーブルを見ると、一冊のノート。



「それ板書と同じだから、写せ。」



委員長のノートの上に重なって、わたしのノートと並んだ。



先生のノート。


びっくりして先生を見ると、相変わらず無表情のまま、タバコを取り出していた。


「あ、ありがと。」


わたしが嬉しすぎる感情を抑えてお礼を言うと、火を点けるのをストップし、わたしの頭にポンと触れた。



そして、「早く写せ」って囁いた。





キュンとするのは、
うん、好きだから。


まぎれもなく、
“先生が”。
< 10 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop