物理に恋して
「…」
宿題もないし、と思いながら、古いソファに座ると、
先生はカタカタカタとキーボードをたたく。
柔らかい静かな音が、準備室に優しく響く。
「忙しい、ですか?」
「指導案。もう終わる。」
先生はちらりとこちらに視線を向けると、ディスプレイに向き直りそう言った。
先生の声。
しぐさ。
やっぱり好きだな、って、思ってしまう。
そんな気持ちを落ち着けるように、ソファの背もたれに寄りかかった。