物理に恋して
「先生ってどのルート同行するの?」
「うちの班のとこ来る?」
女子の矢継ぎ早の質問に、
「基本ホテル待機」
あっさり答える先生の声。
「まじ?」
「せっかく来たのに?」
男子も先生を囲んで騒いでる。
「あたりまえだろ、仕事なんだから」
「えーつまんない!」
「一緒にまわろーよー」
そんな会話が聞こえてくる。
明るい声の間に時々響く、少し低めの先生の声。
「相変わらずクールだね」
菜摘と優希ちゃんが感心したように言う。
「有馬のタイプどんなだろうね…ってこの話、前もしたね」
恋愛トーク好きの菜摘が前を覗き見る。
「したしたー」
優希ちゃんがいつのまに開けたお菓子を差し出してくる。
わたしはポッキーを黙ってくわえる。
「全然噂とか聞かないけど彼女とかいるのかねー」
菜摘がそんなことを言いながら、優希ちゃんのお菓子をつまむ。
「あ、これ好きー!ていうか抹茶ポッキー持参?」
「まじだ!気づかなかった!」
そんなふうに話は流れて、だけど、わたしの心臓は少しドキドキしたままだった。