物理に恋して
今日はいろいろとタイミングが悪すぎる。

例えば、今。
午後一の廊下。


「秋野?」


その言葉に俺は反応しつつ、教室に入る。


「図書館でさ、会っちゃったわけよ。」


廊下で短髪のやたら元気なやつが興奮気味に騒いでる。


「図書館?つかお前が?なんで?」


パックのジュースにストローを挿しながら、短髪のダチが返す。


「いやそれはいいからッ、てか秋野。2Bの秋野が背伸びしてるわけ!」


「はあー?つか興奮しすぎだから。」


俺は意味なくプリントを数える。


「んで、本とってあげたら…ッ」


「あげたら?」


ダチがストローを口から外し、短髪に目をやる。


「…ありがと。だってさ─!!!」


短髪は両手を組み合わせて一気に天に突き上げた。


「マジ?」


「マジ。」


「…つかそれだけ?」


「それだけ─!!!」


満面の笑顔で。


「お前幸せだな」


「いや、マジかわいんだって─今度おまえも…」


キ─ンコ─ンカ─ンコ─ン…


タイミングがいいのか悪いのか。

チャイムが鳴る。
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