物理に恋して
聞いたことある声がして。
「お前とはよくぶつかるな」
こんな時でも、出会ったときを思い出す。
「こんなとこでなにしてんの」
「あ、あの、委員長のデジカメ預かってたから返しに行こうとしたら迷って、」
予想しなかった先生の登場に戸惑いながら、
「端っこまでいったら、619までしかなくて。621ってもしかして反対側かなあ、って」
今の頭の中を必死に伝えると。
「ここ、俺の部屋。」
619と書かれたプレートに目をやって、冷静にそう返された。
えー!
声にならない声で、思考は停止する。
ー..でさー、そん時のこいつの顔がー
急に。
エレベーターホールから誰かの声がして。
振り向こうとした瞬間。
ぐい、と、手をひっぱられたまま。
バタン。
扉が閉まった。