物理に恋して
「ほら。これ」
先生にパーカを渡されて。
「..でも、これ」
「何か言われたら、先生に着ろって怒られたって言え」
先生がわたしにパーカを羽織らせる。
「うん」
先生のにおい。
先生が確かめながらドアを開けると、わたしは、すっと外に出た。
振り向かずに、エレベーターホールへ、まっすぐに向かう。
後ろでドアの閉まる音がする。
大きめのパーカーに包まれて、
先生のにおいが胸を締めつける。
ネックレスを指で触って確かめて。
こっそりしてる自分に、悪いことしてるような気持ちと、先生からもらった、それ以上の幸せな気持ちで、ふわふわしたまま、部屋に戻った。