物理に恋して
「ここ、いい?」
図書館で勉強していると、隣の席の椅子をガタッと引く音がした。
「あ、どうぞっ」
机の上に広げていたプリントを自分の方に引き寄せる。
「どうもありがとう」
丁寧なお礼になんとなくわたしも頭を下げて、それとなく隣をちらりと見る。
「…っあはは!俺だよ、俺」
そう言って笑ってる委員長がいた。
「なに、また物理やってるの?」
「あ、いや、違うの、今、今は英語やってた!」
そう言って丁度手に持っていた辞書を開いて見せた。
「逆さまだよ」
「え…? ああ!」
コ、コントみたいだ…。
両手を使ってぐるぐると辞書の上下を戻すと、委員長は下を向き、声を殺して笑っていた。
それぞれの勉強を始める。
図書館はとても静かで、勉強しやすい。