物理に恋して
水曜日。

あいつは今日も来ない。



いつも美月が一人で座ってる長いソファには男子が5人も座ってるし、その他はどっからか椅子持ってきてテーブルを囲んでいる。


机の周りには女子が数人。



─ こんなに物理とってるやつ、いたか?



ここは溜まり場じゃねえつーの。





「有馬センセー、ここ教えてくださーい!」

「どれ」



渡された問題集のぐるぐると印をつけられた問題に目を通す。



ガラガラッ



前ぶれもなくドアが開いて覗き込んだのは、いつぞやの廊下の短髪。



─ おい、ノックくらいしろよ…。



「あ、小山(こやま)いた!」



短髪は俺には目もくれず、ソファに座った男を見つける。

よく見れば、こいつ短髪のダチじゃん。


「なんだよ。」


うるせーとでも言いたそうに短髪を見上げる、そいつ。


「俺図書館行ってるから!終わったら寄って!」

「へいへい。」


だるそうなダチの返事にもかかわらず笑顔の短髪。



「しつれーしました!」


帰りは俺にぺこっと頭を下げ、ガラッとドアを閉めた。
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