物理に恋して

─ 嵐みてーだな。



「つかメールしろよ…。」



短髪のダチ、小山が窮屈そうにソファで伸びをする、

と、



「じゅ─でんぎれ───!」



何がどうなってるのか、廊下の遠くで短髪がそう叫ぶのが聞こえた。



固まる小山に爆笑の周囲。

賑やかすぎるこの部屋がいつもと同じ場所と思えない。



「本当うるせーなー、隼人(はやと)は」



本気でうんざりしたように小山がつぶやく。



「つーか、なんであいつが図書館?おかしくね?」

「それみんな言うから! なんか“麗しの君”?がいるんだとさー」



あきれながら小山が言う。


「麗しの君?」

「そう、秋野美月」

「11組の?」

「まーじ?」

「まーじ、みてえ」



いつの間にか会話の人数が増える。



─ 勉強しろよ、とも言えない話題に耳を傾ける。



「隼人って選択何だっけ?」

「生物。物理にすりゃよかったとか言ってた」







いつもこの部屋の中心に居るあいつがいない時、話題の中心はあいつ。








本当まいる。
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