物理に恋して
「有馬さん、テスト監督お願いできます?」


今日はそこだけは勘弁してほしい。

が…断る理由もなく、受け入れる。



テスト3日目。

昨日一日がかりで丸つけは終わった。

今日の空き時間で平均点だして、成績つけて。

片付くはずだった。

向かう先が物理準備室から教室に変更され、扉の前で思わず立ち止まる。


「……」


しかも…よりによって、このクラス。



ガラガラガラ――――


「あれ?有馬先生になったの?」

「ああ、吉永先生、急用入ったらしい」

「えー、ラッキー!」


窓際の美月は休み明けにも関わらず疲れた顔で、朝まで勉強してたのがわかる。

テスト用紙を配りなから、美月の席に近づいていく。

テスト監督が変わったのなんて驚きもせず、落ち着いた美月は、教科書をカバンにしまい、頬杖をついていた。

…いつもは挙動不審なのにな。


「あと少しだから、がんばれよ」


思わず、声に出して。


通り過ぎた後、美月の顔が微かに上がるのを感じて、それだけで嬉しく感じるのを自覚する。



やばいな。



黒板に終了時間を書くと、号令をかけた。

「はじめ」

一斉に筆音が響き渡る。



いつもなら、得意なポーカーフェイスも今は怪しくて、とりあえず外を眺める。




近くにいるのに触れられない。





視界の隅に気配を感じながら、そんなことを考え始める。





この前のテストの比じゃなくて。





俺、相当やばいな。

< 45 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop