物理に恋して
開いたドアから見えたのは、女性教師だった。
「居てよかったー!今から出前とるんですけど、有馬さんもどうですか?」
「いや、今日はもう上がるんで。」
「そっか、了解です。いや、職員室で出前取ろうってことで、有馬先生も声かけようってなったんです。」
「あー、ありがとうございます」
「ていうわたしもお弁当持ちなんですけどね」
そう言ってふふふと明るく笑いながら、部屋を見渡す。
「ここ、静かでいいですねえ」
「そーですか?」
「だから、有馬先生職員室使わないのかあ。」
「まあ…そうですね」
職員室に俺の席がないのを知ってか知らずか、疑問な発言にいらつきながらも、応える。
「あ、電話しないと。じゃまた、お声がけしますね!」
「お疲れ様です。」
ドアが閉まると、遠ざかる足音を聞いて、デスクに座り直す。
ガラガラガラ
急にドアが開いて、あいつがいた。
緊張した面持ちで。
「なに」
申し訳なさそうにドアのところで突っ立っている。
「なにかしこまってんだよ」
そう言葉をかけると。
不安そうな顔が一気にほどけた。
やっぱり…
――可愛い。