物理に恋して
「で、何を気にしてんの」
頬に触れればびくっとする。
「先生と、」
「俺と?」
頬にかかる髪をさらりとすくと、わずかに眼を細めた。
「わたし…」
「おまえ?」
下から覗き込むと、目が合った。
赤い頬に潤んだ瞳。
きゅ、と結ばれた唇が目に入る。
「…」
距離を縮めようとする、が、そうはいかなかった。
いつもの美月じゃない。
見つめ返される瞳は、潤んでるのに、逸らさない。
芯のある、強い視線に、俺が逸らしそうになる。
何も言わない美月の瞳が唇が、そうじゃない、と俺に訴えていて。
全身で何かを伝えようとする。
…俺の負け。
「…せん」
「二度と言わねぇから良く聞けよ」
俺が視線を逸らさず告げても、美月はさらに強い視線で返す。
…完全に俺の負け。
想定外の展開だと自分にあきれながらも、腑には落ちてる。
腹を決めて、そのまま美月の頭を引き寄せた。