物理に恋して
もう一度、開いてみる携帯。



先生からは連絡がない。



あたりまえのこと。



だってわたしは先生の電話番号を知らない。



アドレスも知らない。



もちろん、先生もわたしの番号を知らない。



すべては暗黙の了解、みたいなもの。



でも、いいこともある。



先生から連絡が来なくても、がっかりすることもない。



着信音に期待してしまうこともない。





それでも。



夏休みになって、先生に会える手段もなくなったわたしは、もういいことなんて思えなくなっていた。



そして。



電話から聞こえる先生の声はどんなだろう、とか、先生がうつメールはどんなだろう、とか。



そんなことさえ考えてるわたしもいた。



重症な気がする。
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