物理に恋して

集中講座

クリーニング済みの制服のスカートと、いつもは着ないポロシャツを着て、リビングへ降りた。



「あら、学校行くの?」

「うん」



リビングでは小学校のプールに行くらしい弟と、会社に行く前に新聞を読むお父さん、朝食の準備をしているお母さんがいた。


そして、制服を着たわたし。



夏休みじゃないみたいだ。



「旅行、3週目か4週目かな」

「3週目だと花火大会と重なっちゃうでしょ」



新聞から視線を上げたお父さんが、忙(せわ)しく動くお母さんに話しかける。



伊豆の家族旅行のことだ。
毎年行くことになっている。



わたしは弟の食べるコーンフレークに牛乳を足してあげていた。




「美月は花火大会行くの?」

「え、まだわかんない」

「やっぱり3週目がいいわよ〜」



一瞬だけわたしに振られた会話は、すぐに夫婦の会話に戻された。



伊豆の旅行もそうだけど。

毎年開催される地元の花火大会も、楽しみ。



先生と行けたら、なんて妄想が広がりそうになる。



そんなことはお構いなしの弟はすでに朝食を終わらせて、プールカードに自分でハンコを押していた。
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