物理に恋して
窓の外から微かに聞こえるセミの声。
効きすぎるくらいの冷房の音。
涼しいのに汗ばむ手のひら。
「おまえさ」「せんせい」
沈黙を破った言葉が見事にぶつかって、先生と視線がぶつかった。
ぎこちなさに目眩がしそう。
「せ、せんせい、なに?」
「いや、いい」
一応聞いてはみたものの、先生の答えはその一言、だけ。
こうなると先生は絶対譲らないから。
わたしは一呼吸を置いて、もう一度口を開いた。