物理に恋して
先生に指定された駅は、学校とは反対側に30分ほど揺られたところ。



きょろきょろしてみたけれど、先生らしき人はいない。



電話が鳴った。


「どこ?」


ざわめく人ごみの中、先生の声が耳に響く。


「えと、改札です」

「改札? 降りて来いよ」



─ 先生はもう外にいるのかな。



大きなエレベーターを降りて、駅の外に出た。



タクシーとバスと車がひしめくロータリー。


先生の姿は見あたらない。



遠くを見渡しながら、繋がったままの電話にもう一度場所を尋ねようとした時。



「目の前」



言われたままに視線を戻すと、先生がいた。



黒い車、ハンドルを握る先生。


「ほら早く乗れ」


わたしはすぐ前にあったドアを開けると、車に飛び乗った。
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