物理に恋して
「到着」
どこかのビルの立体駐車場に着くと、先生は車から降りて軽く伸びをした。
濃いストレートのデニムに黒いTシャツ、その間から差し色のベルトがちらりと見えた。
─ まともに見られないよ…!
スーツじゃない先生はもはや別人で、わたしは新しい先生に恋した気分になった。
ドアを開けると生ぬるい空気が流れていて、車内が涼しかったことに気づく。
「先生スーツじゃない」
「おまえも制服じゃねーじゃん」
振り向いて鍵をかざして、ドアをロックするとそう言った。