物理に恋して
それから、相変わらず一列に座った車で、ご飯を食べに向かった。



迷って決めたトマトとアボガドのパスタは、すごくおいしくてお腹いっぱいになった。



メニューを見る仕草も、フォークを持つ右手も、飲み物をつぐ左手も、すべてが初めてで、新鮮だった。



先生とご飯を食べてるってことが嬉しかった。





「先生、お金」



レストランを出て駐車場に向かう先生を、お財布を開きながら追いかけた。



「いーよ」



先生はポケットから鍵を取り出すと車に向けた。



「わたしも払う」



お財布からお札を取り出しながら歩いていると、何かにぶつかった。



「きゃ」



おでこをさすりながら上を見上げると、先生が立ち止まっていた。



「おまえ何歳だよ」



あきれた顔をした。



これ以上しつこくしたら嫌われてしまうような気がして、お財布にお札をしまう。
< 74 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop