物理に恋して
それから。



先生からのメールはなかなか来ない。



それでも期待に胸を膨らませたわたしは、浴衣に似合うように髪の毛をアップにしたり、鏡の前で下駄を履いてみたり、巾着を選んだりしていた。



先生に浴衣で会える、そう信じて。



だけど、次に着たメールはそんなそんなわたしの願いをばっさりと切り捨てた。





《無理だろ》






先生の4文字。



滲んでく4文字。



─ バカみたい。



よく考えれば解ったことなのに。



何で考えられなかったんだろう。



鏡に映るわたしは、お団子なんかしちゃって、お化粧なんかしちゃって、相当浮かれてた。



─ バカみた い。



助手席に座るのを気にしてたわたしはどこにいっちゃったんだろう。



気遣えるわたしはどこにいっちゃったんだろう。





それでも、花火大会に行きたかった。






情けなくて、悲しくて、悔しくて、涙が溢れる。




お母さんが着付けてくれた浴衣を脱いだ。





そしてベッドに突っ伏した。
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