物理に恋して
ヒューー…

ドーーーン

「あれ?音とずれてるね」

言うと、すぐ後ろで笑ってる。
笑うと先生の髪がくすぐったい。

「花火大会、行けなくてごめんな」

突然、先生がそんなことを言うから、驚いた。

わたしは首を横に振る。

わたしが勝手に言い出したんだし。

勝手に計画して、勝手に失敗して、落ち込んで。

先生と行けるわけないなんてわかってた。

でも、それを言いたくはなくて。

先生も行きたかったって思ってくれてたら、いいな。

ヒュー…

ド――――――ン

「今度、行こうな」

「今度?」

そのタイミングに、言葉に。
思わず振り向き、先生に聞く。

「今度って?」

「いつか?」

「来年?」

質問に質問を重ねるわたしに、苦笑いして遠くの花火を眺めてた。
隣でベランダに寄りかかる先生。
近づきたいけど、遠くに感じる。

「…」

約束なんてできない。

できない約束はしたくない…

わたしと先生にあるのは今だけだった。

遠くの花火は風向きが代わったのか、打ち上げる位置が変わったのか、半分、木々に隠れてしまった。
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