物理に恋して
スー
先生、寝てる。
先生が寝るなんて。
…!
信じられなくて、驚きすぎて、思わず前を向き直す。
にやける口元を手で覆う。
目の前のTVは変わらずガチャガチャと楽しそうに盛り上がり、そっと振り向くと先生はやっぱり寝ていた。
肩をたたかれたと思った左手は、無造作に放り出されて、わたしのところにきていて。
おふろ上がりの体温が触れなくても伝わってきそうだ。
横に目をやれば、入口に置かれたままのスーツケース。
疲れてたんだろうな。
そんな中、来てくれた先生。
嬉しすぎる。
約束できなくても、いつかのままでも、いい。
やっぱり、先生がいい。
先生のそばにいたい。
「帰るか」そう言った先生の言葉を思い出しながらも。
あと少し、あと少しだけ、まだここにいたいって。
ずるいけど、疲れてる先生をまだ起こしたくないって。
そんな理由(いいわけ)をたくさんならべて、ソファのはしっこに顔をのせて、初めて見る先生の寝顔をずっと見ていた。