【短】恋のTrick or Treat
「まだ帰るなよ」
彼の中で一番低い声だと思った。
怒らせた。
チャラ男を。瓜山を。
好きになってしまった人を……。
今年も最悪なプレゼントだ。悪魔が私に最高のイタズラを仕掛けてるんだ。
「……なんで怒ってるの?」
「………」
言いたくない。
言えるわけない。
いつもあしらってた彼に今更、嫉妬してたなんて言えっこない。
「南川」
「………」
視線が絡み合うと彼は柔らかく笑った。
「欲しくない?俺のTrick or Treat」
そう言って彼は私に近づいてきた。