【短】恋のTrick or Treat
手は繋がれたまま。
どこに向かっているのかも分からず、会話もない時間が過ぎていく。
空は赤く染まってて、さっきの私たちみたいだ。
「ねえ」
沈黙を破ったのは私。
数分ぶりにみた彼の顔はほんのり色づいてる。
これはたぶん夕陽のせいだよね。
「用件ってなに?」
「ようけん?」
「……帰、」
「嘘うそウソ!!帰るとか言わないで!?ごめん……」
私の、目の前に、犬がいる……。
かわ……!!
いやいや、相手人間だから!瓜山だから!犬じゃない!!人間でチャラ男の瓜山だから!!
かわいいだなんて一切思ってないからっ!!
自分の胸に規制をかけて速まる音を抑えさせた。
「……で、用件て?」
「よかったぁ、これで帰られたら俺、生きてけな、」
「それは言い過ぎ」
「ははっ、ナイスツッコミ」