【短】恋のTrick or Treat
「嫌いだよ」
「そ、か」
「……元彼が、あんたみたいだったから」
ごめん、私酷いこと言った。
顔見れないけど瓜山の息遣いが変わったことくらいわかる。
「元彼、ね~……」
それなのにあまりにも明るい声で言うもんだから彼を見上げた。
なぜか笑ってて。
とても嫌な予感しかしなかった。
だって明らかに企んでる顔してるんだもの。
「あ、公園だ。座ろっか」
促されるままぼんやり思う。
ほんとどのくらい歩いたのだろう。
駅からどのくらい離れた?
私この街知らないから現在地が定まらないよ。
「ここどこ?」
「俺ん家の近所の公園!あ、飲みもん買ってくっから待っててー」
そう言って走り去っていく背中を呆然と見つめた。
ちょっと待ってよ。
『俺ん家の近所』って言った?
私はなんてことをっ。
ホイホイついて行ってしまうのは私もかっ!
なにやってんの私は!
あの時、なんで走らなかったんだろう。振り払って改札抜ければいい話じゃん。簡単なことだったはずじゃんよ。
「はい、ココア。でよかった?てかため息なんかついてどうかした?」
あんたのせいだっての!!もーーっ。
「ありがとう。あ、お金……」
「いらないよ。てか受け取りませーん。俺がしたかっだけだからさ」
「じゃ、ありがたく……」
カポっとフタを開けて一口ふくむといつもより甘く感じた。