好きじゃないのに



「失礼します。」



あれ、先生いない。
まぁいいやあとで帰ってくるでしょ。


消毒液消毒液…


あ、あった


うわ、けっこう切れてる。小学生のくせに力強いな。しみるかな…




「女のくせに喧嘩か?」



え、だれ?



そう思って私がさっき入ってきたドアの方を振り返った。





短めの赤い髪
シュッとした切れ長の目
高い鼻
これでもかってくらい着崩した制服


うわ…不良。



でも顔はモテそうな顔…




「喧嘩じゃないです。」



「ふーん…まぁいいや。俺にもそれ塗って。」



自分から聞いたくせにふーんってなによ。
しかも消毒液くらい自分でぬればいいじゃん。


そう思ったけど何も言わないでおく。
不良っぽいから断ったら後が怖いし。




「どこ怪我したんですか?」



「腕。」


少し近づくとこの人の少し甘めの香水の香りが鼻につく。



「じゃあ袖をめくってください。」



そう言うと不良くんは胸のボタンを外していく。





「ちょっ!袖めくるだけでいいですから!」



「あ?そうか。」


ほんと…脱ぐなんてなにしてんのよ。
男に免疫がない私には衝撃が強すぎる…



「おまえ…顔真っ赤だぞ」



「あんたが脱ぐからでしょう!」




あ、やば…素が出ちゃった。




「ははっ」



笑ってるし。
てか笑うと少年みたいでーーー




「かわ…「かわいいとか言うなよ」



うっ…睨んでる。
でも笑ってる顔見ちゃったら
そんなに…不良っぽくないかも…


なんて思っちゃった。



「あいつ助けてやったのに爪でひっかくとかほんと可愛くねぇ…」



ーひっかく?爪?


「ネコだよ、ネコ。」



あーネコを助けたんだ。

なのにひっかかれるとか…



「ふふ…あはは!」



「おまっ…笑うなよ!」



なんて言って睨んでるけど
あんまり怖くないよ。




「そーいうおまえはどーなんだよ。」



「どうって?」



「なんでけがしたんだよ。」



「私は女の子をいじめから助けただけ。」



「いじめ?」



「そう。女の子が男の子に木の枝を投げられそうになってたからそれを助けたの。」



「おまえ、だせぇな…」



「は?」



「俺なら怪我しないで助けてやれるからな。」



勝ち誇った顔で言う不良くん。
いやいや、ネコ助けて怪我してんじゃん。
ほんと失礼なやつ。


「しかもおまえスカートに泥ついてっし。」




え?ほんとっーーー




「嘘にきまってんじゃん。」


ハハって笑う。

なんなの!今確かめようとしちゃったじゃん!私のことバカにする人なんてこの学校にいないのに…



顔に似合わずいたずら好きなのね。



「はぁ…やっと終わった。」



そう言って消毒液をしまう。




「じゃあ、私は教室行かなきゃいけないから。」



「あ、おい!…」




「失礼しました。」



ーーーパタン。


不良くんはなんか言おうとしてるけどまたバカにされるのなんて嫌だから無視しちゃった。










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