風と今を抱きしめて……

　「お前に貸す金など無い。消えろ」

　大輔が睨むと、勝又はフラフラと歩き出した。


　しかし、その先に一郎が立ちはだかっていた。



「二度と彼女の前に現れるな。次は、命が無いと思え！　いいな！」

　一郎は、迫力のあるドスの利いた声で勝又を睨んだ。


　後ろの男三人も、鋭い目で睨んだ。


　勝又の顔は青ざめ、逃げるように走り去った。

　
　きっと、真矢がどこかのヤクザの親分の女にでもなったと思ったかもしれない。



　その姿に男四人は、強さと優しさの溢れた笑みを浮かべた。


「俺、肩怪我して良かったのかも？　プロレスやっていた時は勝つ為だけに戦っていたけど、社長と出会ってからは、正義の為に戦っている気がします。社長に出会えて良かった。俺、幸せです」


　
　谷口の言葉の余韻と共に吹いた秋の風が、四人の男を凛々しく、そして格好良く見せた。


　まるで、世界平和でも成し遂げたような自信に満ちた顔だった……