風と今を抱きしめて……
その声にユウの足が立ち止まった。
「千秋が……俺には大切な親友が居る。そいつは凄い奴だ。俺は親父の仕事を継ぐ事しか出来ないのに、そいつは自分のやりたい事見つけて、必至で自分の道歩いている。
そいつのデザインする建築は凄い、才能があるって自慢していた。
千秋が、俺の誇りはそいつの親友である事だって言ってた。
だからユウ、自信持って建築のデザインやっていいぞ! 二度と辞めるなよ! がんばれ!」
ユウの肩は震えている。
泣いているのだろう……
ユウは、振り返らずにもう一度大きく手を振ると、そのままビルを後にした。
ビルの外には谷口が立って居た。
ユウを見ると、何も言わず深々と頭を下げた。
ユウも深々と頭を下げた。