風と今を抱きしめて……
　保育園の園庭では運動会のかけっこの練習をしている。

　フェンス越しに見ている、ユウの姿があった。


　陸は、前に並んでいる男の子と何やらもめている。

　近くに居た保育士に注意され、シュンとなった。


　かけっこの陸の番になる。


　立ち上がった陸はユウに気付き手を振った。


　ユウも手を振る。


　保育士の

　「よういドン」

　の声に走り出すが、陸はすぐに転んだ。


　しかし、駆け寄った保育士より早く自分で立ち上がり走り出した。


　前の子を抜かし、一位の子とほぼ同時にゴールした。



　陸は自慢げにユウの方を見た。


　ユウもガッツポーズをした。



　ユウは陸のいつの間にかたくましく成長している姿を誇りに思った。



　陸は保育士に連れられ医務室で手当てをしている。


　ユウは、ふわぁと吹いた風に、背中を押されるように歩きだした。



　陸は園庭に戻ると、ユウの居た場所をもう一度探したが、ユウの姿はもう無かった。
　
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