風と今を抱きしめて……
 今日は日曜日だ。

 もう少し大輔を休ませておこうと真矢は声をかけなかった。

 すっかり元気になった陸は、大輔の事が気になって仕方がないようだ。

 そーっと大輔に近づき、額に手を当て熱のない事を確認している。


「陸、おじちゃん休ませてあげなきゃダメでしょ」

 真矢は、陸に注意する。


 しばらくの間陸は大輔から離れるが、今度は自分のおもちゃを大輔の枕元に置き、横で正座している。


「陸、おじちゃんまだ遊べないから、こっちに来てなさい。」

 真矢が叱る。


 しばらく真矢の側に居たが、今度はお気に入りの絵本を持って大輔に近づき、読み聞かせを始めた。


「陸! いい加減にしなさいよ」

 真矢の声も大きくなった。


 大輔が、ぷっっと吹き出した。


「ごめんなさい。休めないでしょ」

 真矢が申し訳なさそうに言った。


「もう、大丈夫だよ」

 大輔は、起き上ががって陸を見た。


「お蔭で熱が下がったぞ。ありがとう。」

 大輔は、陸の頭に手を置くと、くしゃっと撫でた。


 陸は、得意げな顔で真矢を見た。

 真矢は、「はあ―っ」とため息が漏れた。


「ママの声の方が大きいよな」

 大輔が陸に耳打ちした。


 陸は、大きくうなずき笑っている。

 真矢は、大輔を冷ややかに睨んだ。


「シャワー浴びて着替えてきたら?」


 真矢は、夕べ買ってきた下着を大輔に渡した。




 大輔はシャワーを浴びすっきりしたのか、陸とゴロゴロしながら遊んでいる。


 帰る気配は無いので、真矢は大輔に陸を頼み、買い物に出かける事にした。

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