風と今を抱きしめて……
 アパートに戻ると、大輔と陸は二人並んで眠っていた。

 熱の出た後で二人とも疲れているのだろう。

 そっと二人の布団を掛け直した。


 真矢は、さっきのユウの事葉を思い出していた。


 陸は本当に安心して眠っている。

 確かに大輔は悪い人では無いのかもしれない。

 本当は真矢だって解っている。

 でも、これ以上大輔との距離が近くなるのは怖かった。


 夕食はハンバーグを三人で食べた。

 陸は嬉しそうに大輔に話かけながら食べている。


「ママ、今日のハンバーグ美味しいよ」

 陸がはしゃいで言った。


「うん、確かにうまい」

 大輔も大きな口でペロリと平らげてしまった。


「我ながら良く出来たと思うわ」

 真矢も得意げに言った。


 どこにでもある普通の夕食の光景の中、大輔の表情は穏やかで陸に優しい笑みを向けていた。


 その笑みは、席を立った真矢の後ろ姿にも向けられていた。
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