風と今を抱きしめて……
 夕方、大輔がミーティングルームで一人作業をしていた。

 真矢は、ミーティングルームのドアをノックした。

「支店長、お仕事中すみません。先日はありがとうございました。入院費お返しします」

 真矢は封筒を差し出した。


「いや、そんなに急がなくても良かったのに」

 大輔は作業の手を止めて真矢を見た。


「お借りした物は返さなくては……」

 真矢が封筒を差し出すが大輔は受け取らない。


「じゃあ、それで陸と三人で晩飯でも食いにいこう」

 大輔は笑顔を見せた。


 その笑顔に真矢は、なんだか腹が立ってきた。


「支店長もいろいろお忙しいのでは? 陸も元気になりましたから、気になさらないで下さい」

 真矢は他人行儀な言い方をして、封筒を机に置いた。


「なんだよ。それ!」

 大輔の口調がきつくなった。


「陸のお迎えがあるので、お先に失礼します」

 真矢は頭を下げ、部屋を出て行こうとした。


「おい、待てよ」


 大輔が真矢の腕をつかんだ時だった、ドアがノックされ……


「失礼します。何かお手伝い出来る事ありませんか?」

 梨花が入ってきたのだ。


 大輔の手が真矢から離れた。


 頭を下げ出て行こうとし真矢は、梨花に鋭い目で睨みつけられた。


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