風と今を抱きしめて……

～大輔～

　大輔は真矢が避けているようで気になって仕方がなかった。


　ランチルームでユウが大輔の向かいに座った。

　大輔は、真矢の機嫌の様子を聞きたいが聞けずにいた。


「支店長、最近真矢に避けられてないですか？何かあったんですか？」

　ユウが大輔の心を見透かしたように言った。


「そう思うよな？　俺の事何か言ってなかった？」

　大輔は、天の助けでも来たかのような目でユウを見た。


「そうね。梨花さんが支店長のフィアンセだって話はしていたわ」

　ユウは、とぼけて言った。



「ええ！そんなあ。まいったな。それで真矢なんだって？」
　
　大輔は頭を抱える。


「お似合いだって。別に気にしてない様だったけど……」

　ユウは大輔を面白そうに見た。


　大輔はがっくりと肩を落とし、深いため息をついた。


「私、支店長が真矢の事が気になってるとばかり思っていんたんですよね。でも、真矢もこれほど支店長を避けるって事は、けっこう意識しているって事よね」

　ユウは腕を組む。


　大輔は、暗闇に光でも見るかのようにユウを見た。


「でも、あんな若い令嬢フィアンセがいるんじゃ、しょうがないわね。それに、ロスでちゃらちゃら女の子と遊んでいたって噂だしね」

　いたずらでも企んだような目で大輔を見た。


　大輔は又、肩を落とした。


「俺はどうすればいい？」

　大輔は、崩れ落ちるように言った。


「えっ？　どうしたいんですか？　支店長、別に真矢にどう思われていても関係ないんじゃないですか？」


「嫌、それは違う！」

　大輔ははっきりと言った。


「それなら自分で証明するしかないですね……　でも焦らないで、真矢にも少し時間をあげて下さい……」

　ユウの目が愛しいものを思い出しているようで、大輔は少し気になった。



　二人の会話をランチルームの入り口で梨花が聞いていた。

　梨花の表情が硬く、鋭い目にかわったが、大輔もユウも梨花の存在に気が付かなかった。