風と今を抱きしめて……
 五時半少し前に真矢はミーティングルームに入った。

 本社からは誰が来るのだろう。

 椅子とテーブルの確認をし、真矢は入り口に一番近い席に座った。


 陸はどうしているだろう?

 ユウのお迎えに大はしゃぎしている姿が目に浮かんだ。

 ユウに任せておけば大丈夫だが、最近わんぱくになってきて、ユウを困らせなければいいけどなどと考えていた。


 すると、入り口のドアが空き、大輔がパソコンを抱えて入って来た。


 部屋の中に二人きりになると、なんだか気まずい。

 大輔は窓の側へ行き、まだ明るい外の様子を見ていた。

 何か話そうと思うのだが、上手く言葉が出なかった。



 そこへ、真矢の携帯が鳴った。

 ラインだ。

 ユウ『今、陸を捕まえたわよ。安心してね』


 陸が園児服姿で、ピースをして笑っている写メと一緒に送られてきた。


 真矢『ありがとう。陸にユウの言うことちゃんと聞くように言って』


 ユウ『そんな事、伝えないわよ。楽しくやるから任せておいて!』


 ユウ『ごめーん。連絡あった事忘れていた! 今日、本社との打ち合わせ中止だって!』


 「ええっ」

 真矢は声を上げた。


 真矢『それじゃあ、直ぐに帰る』


 ユウ『今夜、陸うちに泊まりたいって。支店長とちゃんと話して来なさい。帰って来ても、陸は渡さないわよ。ちゃんと胸に手をあてて支店長の事見てごらん。じゃあね』


 真矢は大きくため息を着いた。




 同時に大輔の携帯も鳴った。

 ユウ『すみません支店長、打ち合わせ中止の連絡伝えるの、忘れました』

 大輔『なに! 早く言えよ』

 ユウ『うふふっ 真矢と夕飯でも一緒にどうですか? めったに無いチャンスですよ。後は支店長の腕次第ですからね。それじゃあ検討祈ります』


 大輔は、またしてもユウにやられ事に気付き、ふっと笑った。
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