風と今を抱きしめて……
 オフィスには、課長、北野、亜由美が残って仕事を片付けていた。


「皆、焼き肉でも行かないか?」

 珍しく大輔が声を張り上げた。


「すみません、支店長。今夜、娘に彼氏を連れて来るから絶対、早く帰って来いって言われているもので……」


 課長が申し訳なさそうに言った。


「すみません。俺も息子が熱出して……」

 絶対断わらないと思っていた北野が言った。


「私もすみません。これから合コンなんですぅ」


 亜由美が、ごめんと両手を合わせて真矢を見た。


 三人は慌ただしくオフィスを出ていってしまった。



 外で三人がハイタッチしている事など、大輔も真矢も知る訳が無かった。


 勿論、ユウが三人に指示したのだ。
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