俺様御曹司に飼われました
「正直、あの高校生のときの子のこと乗り越えられたのは親として嬉しいんだ。だから、茅ヶ崎さんには感謝してる部分もある」


「乗り越えられてなんかいねぇよ」



乗り越えられてたら、今頃心海とはいない。
また別の人といるはずだ。



「乗り越えられてない?」


「あぁ……。俺はいまも想ってる」


「まぁ、誰を想うのも自由だけど大切なうちの社員を傷つけないでくれよ」


「いや、傷つけようとしたの親父だろ」



どの口が言うかと思った。



「ははっ、それもそうだな」


「俺がいない間、心海のことよろしく頼む」



親父に向かって頭を下げる。



「お前に頭を下げられたのは、あの時以来か」


「あの時……」



最後にもう一日だけ、一緒にいさせて欲しいと願ったあの夜。



「あの時は自分のためだったけど、今度は茅ヶ崎さんのために頭を下げるんだな」



見上げた親父の顔は笑顔だった。



「親父……」


「息子の成長はやっぱり嬉しいもんだな。母さんも喜んでるだろうな、暁が女の子を大事にするようになって」


「……そうかもな」



高校三年。
母親の生まれ故郷に行って、アイツに出会うまで俺は女を取っ替えひっかえしてた。

そんな俺を心配してた母さんも今頃笑ってるかな。

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