俺様御曹司に飼われました
『なんで傷つけるくせに、あいつの心乱そうとしたんだよ』


「俺だってそんなつもりは……」



……なかった。
本当に好きだった。

でも、離れなきゃならないことを分かっていて心海に好きと言わせた。
どうしても心海の心が欲しくて。



『あのまま心海の心を奪わないでくれれば、今頃俺と幸せに暮らしてたよ』


「……っ」


『お前にズタズタに傷つけられて、でもアイツは俺にどうしても別れを告げたかったみたいで……会いにきてお前のことを全部話したあとに急に過呼吸になり出して……俺の前で心海は倒れた』


「倒れ……」



すごく苦しそうに話す先輩に俺も苦しくなってくる。

目の前で好きな女が苦しむ姿をみた先輩はどんなに辛かっただろうか。



『病院につれてって目を覚ました心海は、俺のこともお前のことも自分のことさえも忘れてた』


「そんな……」


『医者がいうには精神的なものだろうって。ただ、勉強とかそういうことだけは覚えてたから受験とかには影響がなかった』


「……そうなんですか」



当時を思い出すように話す先輩にそう口にするしかなかった。

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