俺様御曹司に飼われました
「あんた手に入れれるの?その子。傷つけたんじゃなかったっけ?」



〝傷つけた〟
その言葉に胸が痛む。

傷つけたってのはずっとわかってるつもりだった。
でも、あとから知った事実は想像以上のものだった。


なんで、あの時手を離してしまったんだろう。
あんなふうにしかできなかったのだろうか。

なにもせず、離れればよかったんじゃないか。
事実を知れば、そう思うことが多くなった。

でも、あの頃の俺はまだ幼くて。
あぁいう形でしかできなかった。
どうしても、欲しくて欲しくてたまらなかった。



「うん。傷つけた、ボロボロにした」


「それでよく手に入れようとするわね」



姉ちゃんは呆れ顔。



「あいつ、俺のせいで記憶がないんだ」


「え……?」


「だから、今度こそちゃんと一緒にいたいんだ。やり方は汚いかもしれないけど……出会いを作りたい」


「ま、それだけ真剣に誰かを想うのはいいことよ。可愛い弟に協力してあげるか」


「姉ちゃん、さんきゅ」



それから少し早い部屋割りをして、半年後の社宅に入る場面に備えていた。

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