俺様御曹司に飼われました
『あいつ、思い出したんだ』


「……え?」


『お前とのこと全部』


「……っ」



先輩はさっき、俺と話したくないと言っていると言った。
それは、俺への拒絶を意味する。



『昨日、実家帰っていままで開けたことのない箱あけちゃったみたいでさ』


「……箱?」


『そう、箱。そこにお前と撮った写真とお前が最後にあげたネックレスが入ってたんだ』


「……っ」



先輩の言葉に俺は何も言えなかった。

たしかに、心海を抱いたとき俺はネックレスを心海の首元につけていた。
もう離れなきゃならないのに、俺のものだと言いたくて。
なにか、形で表したくて。

俺のことを思い出してほしくて。
ずっと脳裏に入れておいてほしくて。

俺はもう一緒にいられないくせに、心海を俺との思い出で縛りたかったんだ。



『ずっとあいつの親が鍵をかけて開けれないようにしてたんだけど、たまたま親がいないときにあいつ鍵を探してさ』


「……探したのか」



心海のなかに、なにか思いがあったのだろうか。
そこに俺との思い出があるって、潜在意識の中にあったのだろうか。

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