俺様御曹司に飼われました
「心海、あいつ来たけどどうする?」



過去のことを思い出して、全然寝れなかった。
昼になって少しウトウトしてたとき、チャイムが鳴った。

あたし以外の家族はみんな仕事に行って、いないから代わりに音哉が出てくれた。



「……っ」



音哉の言葉にウトウトしてた頭はハッキリと目覚める。


──暁がここにいる。



「会う?会わない?」


「……会う」



逃げてちゃ、何もならないと思う。
あの時、本当は暁のことを諦めたこと後悔してた。

惨めでもいい。
すがりつけばよかった。

でも、それもできずに苦しい思いに蓋をしたくて逃げた。
記憶を手放して。

だから、今度はちゃんと聞きたい。
暁の本当の気持ちを。

理解してあげたい。
あの頃の暁の気持ちを。

記憶を失ったって、好きになる人は変わらなかったのだから。

どうせ逃げたところで何も変わらない。

いまでも、好きなんだから。

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