俺様御曹司に飼われました
「あの時はああするしか思いつかなくて……本当にごめん」


「どうしてなの?」


「親父が……心海の家族を路頭に迷わすこともできるって、言われたのがあの最後のデートの日。次の日には離れなきゃいけないのがわかってたけど、それでも俺は心海が欲しかった」



苦しそうな表情のまま話す暁に、これは本心なんだってことが伝わってくる。



「でも、なんで今回は?」


「俺ももう18のガキじゃないから。本当はずっとあんな別れでよかったのかって考えてた。傷つけて本当にごめん」



あたしに深々と頭を下げる。



「暁はあたしが会社に入ること知ってたの?」


「ん。ってか、入社試験の日に俺が会社まで連れてった……あん時、俺を覚えてなかったことがありえないくらいショックだった」



入社試験の時のことを思い出す。
慣れない東京に戸惑って、会社の場所がわからなくて何度も同じ道を通った。

その時、焦りすぎて顔は全然みえてなかったけどたしかに助けられた。

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