俺様御曹司に飼われました
「……あれ、暁だったんだね」


「うん。それから入社リストに名前見つけて、姉貴に同じ部屋にするように頼んだんだ」


「そっかぁ……」



どうしてあたしに暁の部屋が当てられたのか。
昨日からずっと不思議だった。
こんな偶然あるはずないもん。

でも、昔から自分のものにするなら手段をいとわない暁のことだから。
今聞いて、納得できた。



「怒ってる?もう……好きじゃないかな?」



心配そうにあたしの顔を覗き込む。

いつも偉そうにしてる暁の弱気な顔。
不覚にもキュンとした。



「……好きだよ」


「え?」


「たぶんあたしは暁以外好きになれないと思うよ。あの頃も今も結局好きになったのは暁だったもん」



すごく恥ずかしくなって、暁から目を逸らす。



「心海、こっち向いて」



そんなあたしの顎をくいっと持って、自分の方へ向かせる。



「……っ」



吸い込まれてしまいそうなこの瞳。
あたしは、きっとこの瞳から逃れることはできない。

逃れるつもりもないけど。

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