俺様御曹司に飼われました
「でもさ、心海は1人だけなんだよ」


「暁……」



暁の言葉にじわじわと涙が溢れてくる。



「おい、なんで泣くんだよ」



慌てたようにシャツの裾であたしの涙を拭う。



「そんな言葉言われたことないもん……」


「本心だから。心海の代わりになるものなんてないんだ。それなら俺は会社よりも心海をとる」



「……ありがとう」



自分じゃなきゃダメだと言ってくれること。
この言葉ほど嬉しいものはないのかもしれない。

〝好き〟とか〝愛してる〟なんて言葉はもちろん嬉しいけど、でもそれ以上に〝代わりはいない〟と言われることが一番嬉しい。



「だからさ、親父のとこ一緒に行こう。俺を信じて」


「……うん、わかった」



誰に何を言われたって平気。
この手を握っていれば、離さなければ幸せでいれるから。



「お前は俺に飼われたんだからさ」


「あ、それまだ有効だったんだ」


「ずっとお前は俺のなんだから、ずっと有効に決まってんだろ」



この主従関係は解消されることはなさそうだなと思うけど、でもそれがあたしたちなのかもしれない。

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