俺様御曹司に飼われました
「親父に用あんだけど」


「書斎にいますわ」


「わかった」



あたしの手を掴んだまま、ズカズカと豪邸の中に入っていく。



「そちらのお嬢さんは?」



ヨシエさんの言葉に暁の足が止まる。



「俺にも大切な人ができたんです」



ヨシエさんを見ずに言うと、そのまままた歩き出した。



「あ、暁……いいの?さっきの人」


「いいんだよ。あれは親父の後妻。元俺の家庭教師で初めてやった女」


「は……?」



早口で言う暁の言葉にあたしの足が止まる。



「なに?」


「いや、なにじゃなくて……初めてって」


「なんの感情もねぇよ。俺はあの女が大嫌いなんだよ」



吐き捨てるようにいって、無理やりあたしを歩かせる。



「ま、待って!」



さすがにこのままじゃ社長に会えるわけなんてなく、暁の背中にさけぶ。



「なに?まだなんかあるの?」



ヨシエさんにあってからの暁の瞳は明らかに冷たい。

あたしにまでその冷たい瞳を向けられてるようで、胸が痛む。
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