俺様御曹司に飼われました
「そう、そいつ」


「……音哉って呼ぶけど?」



音哉とは同期で、入社前研修のときから一緒だったから仲良くなるのは当然で。
気づけば、お互い名前を呼び捨てにしていた。

音哉は四大を卒業してるから、年はあたしより2つ上だけどね。



「なんでただの同期のそいつが名前呼びで、彼氏の俺は苗字呼びなわけ……?」


「あぁ……」



なんでと言われても、この悪魔を彼氏だなんで思えてないあたしは何とも言えない気分になる。



「呼べよ、名前」



車を停めて、あたしの顔を見つめてくる。



「えっと……」



恥ずかしい、とかじゃない。
ただこの悪魔の下の名前が思い出せない。

でも、そんなこと言えない。



「なぁ、呼べよ」



もう一度言われて、観念して。



「あつし……くん」



うろ覚えのその名前を口にして、ぎゅっと目を瞑る。

その瞬間聞こえてくる、ため息。


……違ったんだ。
名前を覚えてないとか、すごい失礼で自分が情けなくなってくる。

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