俺様御曹司に飼われました
「ついたぞ」



ぼーっとさっきの写真のことを考えていたら、いつの間にかついたみたいで身体を揺らされる。



「心海、どうかした?」


「……っ」



名前を急に呼ばれると胸がぎゅうっと掴まれるような感覚になる。



「心海?」


「なんでも、ない……」



悪魔から顔を逸らして、助手席のドアを開ける。

この空間に、悪魔とふたりきり。
こんな状況、おかしくなってしまいそうで。
気が狂いそうで、どうしたらいいかわからない。



「心海、先に行くなよ」



車の鍵をしめて、あたしを追ってくる。



「そんな焦んなくても、映画観に行くだけだよ」



行先は同じなのだから。



「いやなんだよ。近くにいねぇと」


「……なんで」



別にあたしがいなくなるわけじゃないのに、この人はどうしてこんなに不安そうな顔をしているのだろうか。



「心海は俺のものだから」



もう何度目だろう、この言葉。
あやうく信じてしまいそうになるこの言葉。



「わかってる」



でも、信じてるふりをしてあげる。

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