俺様御曹司に飼われました
「とりあえず行くからそろそろ着替えろ」


「はーい」



ゆっくりとベッドから身を起こして、傍にある服を手に取る。



「リビングで待ってるからな」



ぽんっとあたしの頭を撫でて、リビングへと向かう。



「さーて着替えるか……」



音哉がドアを閉めたことを確認して、寝巻きとして借りていた服を脱ぐ。



「会社にくるんだろうな……」



着替えながらも、頭に浮かぶのは悪魔の顔。

あんなシーンを見せられて、ムカつくはずなのに浮かんでくるのは悪魔の笑顔ばかり。



「はぁ……」



ついてはまた溢れてくるため息の嵐。



「本人の前ではこんな顔しないようにしなきゃ……」



音哉の部屋にある鏡に映る自分の顔。
今にも泣きそうな顔してる。

自分で選んだことだけど。
悪魔に会いたいって思ってる自分がいる。

会うことはもちろん会うだろう。
でも、会ったらもう別れを告げなくてはならない。

その寂しさが胸に広がる。

やっぱり、一緒にいる毎日が輝いていたんだ。



「よしっ!」



自分の頬をパチンと叩いて気合いを入れる。

どんな甘い言葉を言われたって、どんなに引き止められたって。
もう、後戻りはしない。

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