俺様御曹司に飼われました
「最近、暁とは……?」



戻ろうとしたあたしをその声が引き止める。



「もう関係ないので」


「茅ヶ崎はそれでいいの?」


「……え?」



いいわけなんてない。
離れても離れても、あたしから悪魔が消えることはなくて。
ずっと避けて、まともに顔も見ていないのにどんどん好きが強くなる。

一緒にいた頃の悪魔との楽しい日々が蘇って。
どんどんその思い出が美化されていく気がする。



「暁のこと好きなんじゃないのか?」


「……っ」


〝好きじゃない〟
そう言ったらいいのに、その言葉が出てこない。


悪魔と強い繋がりのある御堂さんには嘘をつかないとならないのに。

〝好きじゃない〟
その言葉を言うことができない。

それは

──……好きだから。



「自分の気持ちに嘘はつくなよ」


「……はい」


「ま、仕事はしっかりな」



ニコッと笑ってぽんっとあたしの頭を叩く。


どうするべきなんだろう。
自分の気持ちに嘘はつきたくないけど、嘘をつかないと心が保てない。

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