俺様御曹司に飼われました
「なんだ……」



悪魔があたし以外の女の子とキスしたんだってずっと思ってた。

それが違うと分かると、へなへなと力が抜けていく。



「おい、大丈夫かよ」



力が抜けて、立っていられなくなったあたしの腰をクイッと持って支える。

いままでよりも近くなったその距離に胸がぎゅうっと締め付けられる。



「だ、大丈夫……」


「そんなに心配だったのかよ?」



あたしを立たせて、意地悪そうにニヤっと微笑む。

この表情。
意地悪な顔なのに、好きなんだ。
ゾクゾクさせられる、この表情。



「心配、だった……」


「……っ」



あたしの言葉にびっくりしたように目を見開く。

初めてかもしれない。
悪魔に対して、素直になるのは。

そりゃ、びっくりもするか。



「……お前、俺のこと好きなの?」



さっきびっくりした顔をしてたくせに、すぐに意地悪そうな顔に戻る。



「……っ」



この気持ちを言ってしまっていいのかわからない。

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