俺様御曹司に飼われました
「行くぞ」


音哉に腕を引っ張られて椅子から立ち上がる。


「行くって?」


「居酒屋」


「は!?嫌だよ!」



悪魔がほかの人といるところなんて見たくない。



「いいから、俺とデートだ。デート」



椅子の横に置いてあるあたしのカバンをとって、腕掴んだまま歩き出す。



「……もう」



あたしの周りはどうしてこうもあたしの話を聞いてくれない人ばかりなのだろうか。



「どうせこのままここにいても悶々としてるだけだろうが」


「そうだけど……」


「ちゃんとハッキリさせろよ。お前らのこと」


「……っ」



音哉の言うことは正論だってわかってる。
このままではいけないってことくらい。

でも、ハッキリさせて悪魔となんの関係もなくなるのが怖い。



「あの御曹司、お前のこと好きだと思うぜ?」


「……それだけはないよ」



そう思わせてるのは、あの人の心にはあたしの顔があるから。

ううん、あたしに似たあの女の人。

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